海底の石室へ入り、点字を読み、決められたポケモンを並べる。すると、遠く離れた遺跡の扉が開く。
『ポケットモンスター ルビー・サファイア』でレジロック・レジアイス・レジスチルを探した人なら、あの妙に静かな謎解きを覚えているかもしれません。冒険の途中で見つけた岩の奥に、ずっと何かが閉じ込められていた。その理由を、誰かが詳しく教えてくれるわけでもありません。
やがて、この3体には「戦争や原爆をモチーフにしているのでは」という都市伝説まで広まりました。点字、遺跡の場所、技を覚えるレベル。一つずつ並べられると、気になる話です。
ただ、実際のゲームと照らし合わせると、話が合わない部分も出てきます。何が本当にゲームにあり、どこからプレイヤーの想像が加わったのか。まずは、あの扉を開くところからたどってみます。
レジ系はなぜ不気味?別々の遺跡に眠る3体
レジ系の不気味さは、姿だけではありません。そこへたどり着くまでの手順にも、ほかのポケモンを探すときとは違う雰囲気があります。
レジロックは岩、レジアイスは氷、レジスチルは金属の体を持つポケモンです。表情を読み取りにくい姿で、顔に当たる部分には点が並んでいます。かわいい生き物というより、遺跡の中で突然動き出す像を思わせます。
ホウエン地方では、3体はそれぞれ別の場所に眠っています。
- レジロック:111番道路の「さばくいせき」
- レジアイス:105番水道の「こじまのよこあな」
- レジスチル:120番道路の「こだいづか」
この3か所の封印を解くきっかけになるのが、「おふれのせきしつ」です。リメイクの『オメガルビー・アルファサファイア』でも、この仕組みが引き継がれています。出現場所・封印解除の資料
ただの珍しいポケモンなら、どうしてこんなに厳重に隠す必要があったのでしょう。先に疑問を残してから、こちらに扉を開けさせる。その順番が、少し怖いのです。

おふれのせきしつの点字には何と書かれている?
石室の点字は、意味のない模様ではありません。謎解きの指示と、そこにいた人々の記録が刻まれています。
恩を受けたポケモンを、なぜ閉じ込めたのか
最初の部屋には文字を読む手がかりがあり、壁の指示に従って「あなをほる」を使うと先へ進めます。奥に残された文章を読みやすく言い換えると、人々は洞穴で暮らし、ポケモンのおかげで生きてきたものの、そのポケモンを恐れて閉じ込めた、と書かれています。
「こわかったのだ」という短い言葉が、特に印象に残ります。助けてもらっていたはずなのに、共に暮らせなくなった。何があったのかまでは書かれていません。
それでも最後には、勇気と希望を持つ者へ扉を開くよう呼びかけています。危険だから永久に近づくな、という警告だけで終わらないところも不思議です。点字の転記・作品別比較
この文章自体に「原爆」「空襲」「防空壕」という説明があるわけではありません。洞穴での生活や封印を、後から戦争と結びつけて読んだのが都市伝説です。
ジーランスとホエルオーが必要なのはなぜ?
石室では、手持ちの並べ方まで指定されます。『ルビー・サファイア』と『オメガルビー・アルファサファイア』は先頭がジーランス、最後がホエルオー。『エメラルド』では、その順番が逆です。並び順の違い
この2匹を連れていく必要があることは、ゲーム内の条件です。ただし、なぜこの組み合わせなのかという制作上の理由までは、今回確認した公式資料からは分かりませんでした。
古い姿を残す魚と大きなクジラから、生命の歴史や海と陸のつながりを連想する考察があります。一方、戦争説には、2匹の大きさや形を原爆の名前・形状へ結びつける話もあります。どちらも、ゲームがそう説明しているわけではありません。
必要な2匹と並び順は分かる。でも、その意味までは語られない。謎解きを終えた後にも疑問が残る仕掛けです。
レジ系と戦争・原爆を結びつける都市伝説
戦争説は、いくつかの気になる要素をつなぎ合わせた話です。ただし、それぞれの材料が同じ強さの根拠を持つわけではありません。
ホウエン地方と九州、3つの遺跡の位置
ホウエン地方のモデルが九州であることには、開発者の説明があります。増田順一さんはゲームフリークの公式ブログで、子どものころに九州で過ごした夏の思い出を取り戻したかったと記しています。地図の向きを変えた理由も、遊びやすさからだと説明しています。増田順一さんの公式ブログ・2004年9月9日
そこからネット上で広まったのが、3体の遺跡を長崎・大分・宮崎などの被災地へ重ねるファン考察です。「こじまのよこあなは長崎を表している」といった説明を見かけますが、公式が示した対応関係として確認できたものではありません。
ところが、紹介記事によってはレジロックとレジスチルに当てる県が入れ替わっています。また、地図を重ねても位置がずれるという検証記事もあります。2016年の都市伝説紹介/地図の対応を検討したファン記事
モデルになった地域があることと、個々の洞窟が実在の被災地点を正確に指していることは、分けて考える必要があります。今回、3つの遺跡と被災地が完全に一致すると確認できる資料や、公式の対応表は見つかりませんでした。
地図から歴史を連想することはできます。しかし、「場所がぴったり一致するから、戦争がモチーフだ」とまでは確かめられていません。

「8月9日」と「はかいこうせん」の噂
もう一つ有名なのが、3体が「はかいこうせん」を覚えるレベル89を、8月9日へ読み替える説です。
1945年8月9日は、長崎に原爆が投下された日です。これは実際の歴史です。長崎市の解説
一方、技のレベルは作品によって変わります。3体のレベルアップ習得データを比べると、次のようになります。
| 作品 | はかいこうせん | だいばくはつ |
|---|---|---|
| ルビー・サファイア・エメラルド | Lv.65 | Lv.1の習得技 |
| ダイヤモンド・パール・プラチナ/HGSS/BW・BW2/X・Y | Lv.89 | Lv.1の習得技 |
| オメガルビー・アルファサファイア/サン・ムーン・USUM | Lv.67 | Lv.1の習得技 |
| ソード・シールド/BDSP/スカーレット・バイオレット | Lv.72 | Lv.78 |
3体に共通する値です。ここでのLv.1は習得リスト上の区分で、そのレベルの野生個体に出会えるという意味ではありません。技マシンなどによる習得とも分けています。第3世代のデータ/第4世代/X・YとORASの違い/第7世代/第8世代/第9世代
つまり、「89」という数字は確かにゲームのデータにあります。ただ、初登場したホウエンの作品では65です。初登場時からずっと8月9日を示していた、という説明には合いません。
後の作品でレベルが変わったことを「噂を隠すためだった」と読む話もありますが、変更理由をそう説明した公式資料は確認できませんでした。数字の変化だけで、開発側の意図まで決めることはできません。
「だいばくはつ」を思い出すと、過去の記憶が戻る?
古い作品では、技を思い出す仕組みで「だいばくはつ」を覚え直せます。この「思い出す」という言葉から、大昔の爆発の記憶が戻るのでは、と想像されたわけです。
ゲームにあるのは、技を習得し直す仕組みです。レジ系が戦争の記憶を取り戻す場面や、そのことを語る台詞があるわけではありません。また、「だいばくはつ」はレジ系だけの専用技でもありません。技の習得データ/だいばくはつの技資料
それでも、封印されていた存在が「だいばくはつ」を思い出す、と聞くと、一つの物語に感じられます。こうした言葉の重なりが、都市伝説を覚えやすくしたのだと思います。

「公式が認めた」という話は確認できる?
ネットには、都市伝説そのものだけでなく、制作側へ問い合わせたという話も流れています。ここも、出所を確かめたい部分です。
今回調べた範囲では、任天堂・ゲームフリーク・株式会社ポケモンが戦争説や原爆説を認めたと確認できる公式発表、開発者の発言原文、出所を検証できる回答文は見つかりませんでした。
逆に、「制作側が否定した」と書くファン記事もありますが、その記事から公式回答の原文へはたどれませんでした。この記事は伝聞が流通している例で、公式見解を裏付ける資料ではありません。認めたという話も、否定したという話も、伝聞だけで確定させないようにします。制作側の回答という伝聞が流通している例(ファン記事)
また、姿の特徴を実在の被爆者や障害のある人と結びつける派生説もあります。しかし、その関連を裏付ける根拠は確認できません。見た目だけで人の被害や身体を説明する読み方は、この記事では採りません。
ゲームから歴史を連想することと、実在の被害をキャラクターの隠し設定だと決めることは別です。レジ系の謎を楽しむときも、その線は残しておきたいと思います。

レジギガス・レジエレキ・レジドラゴで広がった封印の話
後の作品では、レジ系の仲間が増えました。そこで語られるのは、古代の人々と、扱いきれないほど大きな力の関係です。
レジギガスには、大陸を引っ張って動かしたという伝説があります。公式のポケモンずかんにも、この話が載っています。後に登場したレジドラゴについても、レジギガスが作ろうとしたという伝説が紹介されています。公式ずかん・レジギガス/公式紹介・レジドラゴ
『ソード・シールド エキスパンションパス』の公式サイトは、レジドラゴが完成すれば国を滅ぼすかもしれないと古代の人々が恐れ、封印したと説明しています。レジエレキについては、古代の人々が力を抑えるために器具を取り付けたのではないか、という作中の説を紹介しています。公式紹介・レジエレキ
おふれのせきしつの「こわかったのだ」を思い出す話です。人間を助ける力が、同時に人間の手に負えないものでもある。そう読むと、レジ系の封印には、戦争説を持ち出さなくても怖さがあります。
もちろん、後から加わった設定だけで、最初の3体の制作意図がすべて分かるわけではありません。それでも、公式に語られている封印の話は、都市伝説と並べて読む価値があります。
もう一度レジ系を見ると、何が不気味なのか
戦争説の根拠を確かめても、あの石室の雰囲気まで消えるわけではありません。ゲームに残っている疑問は、今もあります。
人々はポケモンに助けられながら、なぜ閉じ込めるほど恐れたのでしょう。封印の記録を書いたのは誰で、その人々はどこへ行ったのでしょう。
点字には、短い言葉しか残っていません。その空白へ、地図や技の名前、現実の歴史が重ねられ、レジ系の都市伝説は広がっていきました。数字や場所が合わないところは確かめながら、それでもなぜこんな話を想像したくなるのかを考えると、遺跡の見え方も変わります。
次に石室を訪れるなら、捕まえ方だけでなく、壁の文章も読んでみてください。怖がって封印した人々が、最後には誰かへ扉を開くよう呼びかけている。レジ系の謎は、そこだけでも十分気になります。

コメント
コメント一覧 (1件)
[…] 数字や場所の一致から物語が膨らむ点は、レジ系の点字や遺跡をめぐる都市伝説にも通じます。細かく確かめるほど、合うところと合わないところが見えてきます。 […]